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成功者インタビュー 成功者インタビュー 成功者インタビュー

「何よりも、大川美術館を全国の方に知っていただく
きっかけを作れたことがいちばんの収穫です」

地元桐生市と美術館、
一丸となって歩んだプロジェクト成立までの道のり

06.

大川美術館・田中館長、川合事務局長
桐生信用金庫・永沢さん

大川美術館は、桐生市出身の実業家・大川栄二(1924-2008)が、1989年4月に桐生市の支援を得て開館した私立の美術館です。 ここには、昭和前期を代表する洋画家・松本竣介の作品が多数収蔵されています。竣介の没後70年を記念して、彼が生前過ごしていたアトリエと同じスペースをよみがえらせ、「画家の思索に寄り添いながら」作品を鑑賞してもらう企画展が立ち上がり、その費用のため、Readyforでクラウドファンディングに挑戦しました。 法人の美術館が、目標金額5,000,000円を大きく上回った7,485,000円もの大きな資金を集めることに成功したのは、Readyforで初めてのことでした。 プロジェクトページ、広報活動でどのような工夫を凝らしていたのか。お話を伺いました。

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大川美術館・田中館長

Story 1.

地域のつながりを活かし全国に発信していく
ふたつのエネルギー

―まず、どんな経緯で今回のプロジェクトが立ち上がったのでしょうか?

当館は、美術コレクターであった大川栄二が、日常生活において「自身の部屋で絵を見ていた」ことに原点があります。私たちは絵と鑑賞者の距離の近さにこだわり、作家を身近に感じてもらえるような空間を、ずっと模索してきました。 今回の「アトリエ再見プロジェクト」はそんな考え方の延長線上にあります。
竣介の没後70年の企画展にあわせて、館内に、当時のアトリエと同じ大きさのスペースを設け、かつてそのアトリエにあったモノを置き、さらに作品を展示する。作家が当時体験していた空間を擬似的につくり出すことで、作家をより身近に感じていただけるのではないか。そう考え、今回のプロジェクトを立ち上げました。
ただ、500冊に及ぶ書籍、書棚に加え、イーゼルという大きなモノからペンという小道具にいたるまで、70点を超えるモノたちを当館に運搬し、展覧会を開催するためかかる費用はとてもチケット代だけでまかなうのは難しく、お金を集める必要性を感じていました。

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松本竣介の代表作《街》1938年

―その費用を、クラウドファンディングで集めようと思ったきっかけを教えてください。 

もともと当館にも、メンバーシップ制度(寄付制度)といって、チケット代とは別に寄付金を集める手段はありました。しかし、寄付額が固定されてしまっていたんですね。法人の場合は50万円、個人の場合は2万円、というように。いずれも決して少額ではないので、お断りされてしまう場合も少なくありませんでした。
また、これからの時代は、純粋な寄付というよりも、ご支援いただいた方へのお返しについても考えていかなくてはいけないのではないかと感じていたので、ご支援いただく金額を自由に選ぶことができ、美術館側からもリターンを提供できるクラウドファンディングに魅力を感じ、挑戦してみようかという運びになりました。

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大川美術館・田中館長

―数あるクラウドファンディングサイトの中から、どうしてReadyforを選ばれたのでしょうか?

実は当館が選んだというわけではなく、お付き合いのある桐生信用金庫さまがReadyforと提携しているということで、ご紹介いただきました。
群馬県内にも、地元に特化したクラウドファンディングサイトがあるのですが、今回は、地域にとどまらずより多くの方に大川美術館を知っていただける方が魅力的だと思い、全国展開しているReadyforに決めました。 また、クラウドファンディングに挑戦するのも初めてのことだったので、キュレーターの方がついてくれたことは心強かったです。当初は200万くらいを集めて一回の展覧会ができれば、と考えていたのですが、Readyforのキュレーターの方と相談して、連続する三つの展覧会をひとまとめに考えて、総額500万を集めるのでどうか、という話になったんです。結果、小さい目標額でまとまらずたくさん集まったといえるので、ご相談して、500万円を目標金額としたプロジェクトにすることができてよかったなと感じています。

Story 2.

プロであるキュレーターの判断に
安心できた一面も

―プロジェクトを公開するために、特に力を入れて準備したことはありますか?

プロジェクトを公開するよりも前に、告知用チラシができていたというのもあって、事前の宣伝にはかなり力を入れました。市役所まで足を運んだり、地元の企業をあたったり。個人的に繋がりのある仲間にも、これを機にたくさん声をかけました。
「大川美術館になら(支援するよ)」ということで、ポジティブな反応が多かったのは嬉しかったですね。桐生信用金庫さまにサポートしていただいていたということもあって、地域との信頼関係も上手く築けていたのではないかと思います。インターネットを使ってのクラウドファンディングといっても、そうやって実際に足を運ぶ必要があったのは、一番の苦労だったかもしれませんが。そうして公開してから1週間で100万ほどご支援が集まったのですが、そこから一度停滞してしまったのは焦りましたね。
ただ、キュレーターの方に、「よくある現象ですよ」と言われて。「そうなのか、じゃあ大丈夫かな」と不必要に焦りすぎずに済んだのは良かったです。とはいえやっぱり不安で、さらにいろんな方にお願いに回っていましたが。

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大川美術館・川合事務局長

―目標金額(500万円)を達成してからも、ネクストゴール(700万円)まで勢いが止まりませんでしたね。

キュレーターさんいわく、「『このプロジェクトは確実に成立する』と分かると安心して支援ができる、という人が多くいて、目標金額の達成前後には支援が伸びやすい」とのこと。その点今回は、遅すぎず早すぎず、本当に良いタイミングで達成させられたのが良かった。 本来の目標を大幅に超えて集められたのも、そんなタイミングに依るところも大きいと思います。

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Story 3.

Readyforと、提携先と、実行者。
三人四脚で進んでいったプロジェクト

―今回は、桐生信用金庫さんとの広報面での連携も、大きな要因でしたね。

桐生信用金庫さまには、精力的にチラシを配っていただいたり、「きりしん未来創生会」という若手経営者の会をご紹介いただいたり。地元の方々への告知に、非常にご尽力いただきました。組織をあげて応援してくださったことが本当にありがたかったです。


永沢(桐生信用金庫)弊社としても、Readyforと提携して初めての案件だったので、どんなお手伝いができるだろうと探り探りでしたが。こうやって新しいことにどんどんチャレンジしていこうという態勢が組織の中でできていくのは楽しいですね。

―その他、プロジェクトを進めていく中で、広報活動はどのように行いましたか?

新聞、雑誌などのメディアの力も大きかったです。
桐生の地元紙にとどまらず、松本竣介にゆかりのある各地(山陰や東北、四国など)の紙面でも紹介いただけたので、全国の方に向けてアピールができたのではと思います。
もちろん、美術ファンの方や、大川美術館の創業者の理念にご共感いただいた方からも、実にさまざまな立場・動機の方からReadyforを通してご支援していただけたのも、財産になりました。

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Story 4.

資金調達だけでなく
地域とのつながりを見直すきっかけに

―最後に、クラウドファンディングを通して感じたことを教えてください。

まず、Readyforを通して、全国各地の様々な方に大川美術館を知っていただけて、ご来館いただけるきっかけを作れたこと。また、インターネットだけではなくて、桐生市や、桐生信用金庫さまを通して繋がれた地域の企業の方々と信頼関係を構築できて、今後地域のつながりを持てるきっかけになったこと。
多くの方にご支援いただいて、展覧会を開催できることはもちろんなのですが、プロジェクト成立云々に限らず、こういったきっかけをつくれたことが本当に嬉しいし、ありがたいですね。
今回の展覧会の後も、大川美術館に足を運んでいただけるよう、更に頑張っていかないといけないなと思いました。
プロジェクト終了後、他の美術館の方から「クラウドファンディングについて話を聞かせて」と声をかけられる機会もあり、今後美術館業界でこういった取り組みが普及すると良いなと思います。 

―ありがとうございました。

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左から、館長・田中さん、事務局次長・正田さん、桐生信用金庫・永沢さん


文:廣安ゆきみ


※文中の記述はインタビュー当時の内容です。

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